野球の審判を最近止めた方の話が、耳に飛び込んできた。
その方は、緑内障を患い、動体視力が落ちたので審判を止めた、という。
動体視力が落ちると、どんなことが起こるのか。
タッチプレーで、足が下か、グラブが下か、見極められなくなるという。
その方は、自分の審判技能に自信と誇りを持っていた。
その誇りが保てなくなったので、止めたわけだ。
クロス以外のプレーでは、まだまだ判定出来たし、落球などは、他の審判もいるので、修正ができる。
ところが、ベース上のクロスプレーは、そうはいかない、というわけだ。
走塁の上手い選手は、ベースに足が素早く入ってくる。
下手な選手は、ゆっくりと入ってくるので、アウトになるという。
下手な選手が「セーフ!」と主張すると、口には出さず、『もっと、走塁技術を磨け!ヘタくそ』と叫んでいたそうだ。
若い審判には、「正確に判定できる位置へ、常に動け!」と教えていた、という。
「ヘタな審判は、まだまだできると思っている。
でも、誇りをもって、判定できなくなったら、やはり終わりにしないとね」
審判から離れることは、淋しそうだったが、引き際の美学を感じて、気持ちよかった。