午前8時、玄関のチャイムが「ピンポーン、ピンポーン」と鳴った。
こんな早くから、いったい誰だろうと、小百合さんが玄関へ向かった。
部屋の中で、誰なのかなーと思っていると、再度、「ピンポーン、ピンポーン」とチャイムが鳴る。
玄関へ行ったはずなのに、どうしたのかといぶかりながら、腰を上げて玄関へ向かう。
すると、そこに小百合さんの姿がない。
鍵はロックされず、開けて外をみるが、誰もいない。
どうしたのかと心配になり、外へ出てみた。
すると、上の方で、かすかに声がする。
玄関を開けたまま、慌ててその声を追って、階段を駆け上がった。
目に入ったのは、上の階のK君(3歳)を抱いてあやしている小百合さんの姿だ。
パジャマ姿のK君は、「ママ、ママ」と泣き叫んでいる。
どうやら寝ていたK君を置いて、お母さんが出かけてしまったようだ。
「お母さんに電話して」という小百合さんの指示で、お母さんに連絡した。(携帯は便利だ)
お兄ちゃんを通園バスまで送っていたらしいが、すぐに戻ってきてK君を抱っこした。
それにしても、よく下まで靴を履いて来られたものだ。
チャイムにも、ようやく手が届くようになったところだと聞いた。
早朝の訪問者は、自分の出来る範囲で、必死になってお母さんを探していたんだと感心した。