二宮金次郎の教えの基本は、道徳と経済の一致、だという。
それは、《道徳なく経済は罪悪であり、経済のない道徳は寝言である》という言葉で現われている。
前半は容易に理解できるが、後半の寝言とは、どういうことだろうか。
道徳が、心の問題であるうちは金はかからない。
範囲を広め、社会奉仕、公共事業の展開となれば、資金が必要になる。
金がないのに、言ってるだけでは何の役にも立たない。
金がなくて実現しなければ絵空事、寝言にすぎない、といっているのだ。
三戸岡道夫著「金原明善の一生」を、読み始めている。
金次郎の教えは、同著のあとがきに書かれているものだ。
金原明善は、それを天竜川の治水事業と植林事業で行った。
まず、祖先伝来の全財産を提供した後、まだ不足する資金を作るために銀行を経営する。
銀行を経営して儲かったので、その利益の一部を植林に投入したのではない。
植林に利益を投入するために、銀行を経営したのである。
三戸岡は、最初から社会事業に投入する利益を得る目的で企業経営した、稀有の人ではないかと評している。
規模の大小は別にして、こうありたい生き方の手本として現役を続けたい。